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今と昔のドラマがわかるドラマ好きのためのレビューブログ

【2019年の大河ドラマ】サブタイトルが物語を占う?『いだてん』

1話をみて、その物語を分析してみたとき、サブタイトルが文学のタイトルになっていると書いた。

 

文字通りの内容のときも出てきそうだが、2話「坊っちゃん」は、金栗家の“坊っちゃん”である四三と美濃部家の“坊っちゃん”である孝蔵の生い立ちを比較しつつ、“坊っちゃん”の作者である漱石が四三の故郷・熊本にいた(そして四三も幼少期会っていた?嘉納治五郎の代わりにだっこされていたのかも……?)ということを描いていた。

 

だから、もしかしたらサブタイトルがその回の内容を象徴する何かを描くのかもしれないし、そもそも文学のタイトル(3話は雑誌だが)をサブタイトルとして採用しているというシャレがおもしろい。

 

ということで、『いだてん』のサブタイトルとその引用元について、リンクで恐縮だが、紹介していく。

今のところ、放送するごとに更新予定。

 

【1話(1/6放送)】

夜明け前

※いわずもがな小説のタイトル。

 

【2話(1/13放送)】

坊っちゃん

※この回も小説のタイトルになっている。

 

 

【3話(1/20放送)】

冒険世界

※昔の雑誌のタイトル。

 

【4話(1/27放送)】

小便小僧

※ここは小説、雑誌絡みではない!

 

【5話(2/3放送)】

雨ニモマケズ

※宮沢賢治の有名なアレ。

 

【6話(2/10放送)】

お江戸日本橋

※こちらは民謡と柴田錬三郎の小説がある。

 

 

【7話(2/17)】

おかしな二人

※こちらも小説絡みではなく演劇。

 

 

【8話(2/24)】

敵は幾万

※こちらは軍歌が元ネタ。

 

【9話(3/3】

さらばシベリア鉄道

※太田裕美の楽曲のタイトル。ちなみに作詞・松本隆、作曲・大瀧詠一。ちなみにちなみに大瀧詠一がセルフカバーもしている。

 

【10話(3/10放送)】

真夏の夜の夢

※ユーミン!と言いたいところだけど、きっとシェイクスピア。

 

【11話(3/17放送)】

百年の孤独

※ガブリエル・ガルシア=マルケスの小説のタイトル。

 

【12話(3/24放送)】

太陽がいっぱい

※アラン・ドロン主演映画のタイトル。

 

 

【13話(3/31放送)】

復活

※おそらくこちらのトルストイの小説のほうと引っ掛けているのではないかと。

 

 

【14話(4/14放送)】

新世界

※ジャン=リュック・ゴダールの映画とかけているのかな……と思いたい。

 

 

【15話(4/21放送)】

あゝ結婚

※ソフィア・ローレン主演のイタリア映画のタイトル。

 

【16話(4/28放送)】

ベルリンの壁

※これは小説、映画のタイトルでなく、歴史的建造物のこと。

 

【17話(5/5放送)】

いつも2人で

※オードリー・ヘプバーンの映画のタイトル。

 

【18話(5/12放送)】

愛の夢

※クラシックのタイトル。

 

【19話(5/19放送)】

箱根駅伝

※年始恒例のあの大会のこと。

 

【20話(5/26放送)】

恋の片道切符

※ニール・セダカの曲名。

 

【21話(6/2放送)】

櫻の園

※吉田秋生の漫画、それをもとにした映画。

 

【22話(6/9放送)】

ヴィーナスの誕生

※言わずと知れたボッティチェッリのあの名画のタイトル。

 

【23話(6/16放送)】

大地

※パール・S・バックの小説とそれを原作とした映画のこと……と思いたい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%9C%B0_(1937%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%98%A0%E7%94%BB)

 

【24話(6/23放送】

種まく人

※ミレーの絵画のタイトルから。

 

【25話(6/30放送)※第二部スタート】

時代は変る

※ボブ・ディランの楽曲名。

 

【26話(7/7放送)】

明日なき暴走

※ブルース・スプリングスティーンの楽曲名。

 

【27話(7/14)】

替り目

※ついに!落語の演目のタイトル。

 

【28話(7/28)】

走れ大地を

※1932年に発売された国際オリンピック派遣選手応援歌。

 

【29話(8/4)】

夢のカリフォルニア

※ママス&パパスの楽曲。

※ちなみに、脚本の宮藤官九郎は『夢のカリフォルニア』というドラマに昔出てました。

 

【30話(8/11)】

黄金狂時代

※チャップリンの映画のタイトル。

 

 

【31話(8/18)】

トップ・オブ・ザ・ワールド

※カーペンターズの楽曲のタイトル。

 

【32話(8/25)】

独裁者

※チャップリンの映画。

 

【33話(9/1)】

仁義なき戦い

※飯干晃一原作のノンフィクションおよび深作欣二監督によるヤクザ映画。

 

【34話(9/8)】

226

※1989年に公開された二・二六事件をモチーフにした邦画。ちなみにこの映画のメインキャストが萩原健一。『いだてん』劇中では、ショーケンが二・二六事件で亡くなった高橋是清を演じているから、あえてこのタイトルにしたのではないかと!

 

マウンティング、モラハラ、闇落ち、毒母……苦痛な出来事がてんこ盛りなのに、なぜ『凪のお暇』がおもしろいのか

前に書いたとき

最初は全然期待していないと言っていたけれど1話はおもしろくて、2話以降はどうなのかなーと思っていたけれど、やっぱり毎回おもしろい『凪のお暇』。

はじめに|TBSテレビ:金曜ドラマ『凪のお暇』(なぎのおいとま)

 

でも、主人公・凪(黒木華)は空気読みすぎたことに疲れて「お暇」するため会社も知人も彼氏とも縁を切って、誰も知らないところに引っ越してという……要は、社会からドロップアウトした人間。

 

だからこういっちゃアレだけど、「心揺さぶられるアクシデントって起こるの!?」というのがこの物語においての疑問だった。

……んだけど、このドラマ見ていると、そんな心配吹き飛ぶくらいアクシデントだらけ!

 

まず、凪がドロップアウトするきっかけの一端を担った、会社の同僚女子たちによるフルボッコのマウンティング。

そして、信じていた恋人の慎二(高橋一生)によるモラハラ。

友達をつくろうと意を決してハローワークで話しかけた坂本さん(市川実日子)は洗脳されやすいし、

アパートの隣人・ゴン(中村倫也)に恋をするも、人をダメにするソファ……じゃなくて、女子をダメにする男(メンヘラ製造機)で……。

それでもって、凪の母は凪にちゃんとした会社で働いて、髪も天パーじゃなくてちゃんとストレートにして……と「ちゃんとしていること」を強要してくる毒親。

 

でも、凪が人生リセット中に偶然会ってしまったマウンティング女(瀧内公美)には、さり気なく(いや意外と強烈)なパンチを食らわせ、慎二と一緒にいると息苦しいことにやっと気づいて別れを告げ、運が上向くブレスレッドを売りつけようとした坂本さんもちゃんと拒否して、ゴンと付き合ってみて一瞬闇落ちしたけど隣人の白石さん(吉田羊)親子に救われ、別れる決意もできたし。

髪の毛を毎日時間をかけてどストレートに整えて、空気を読みまくって、とにかくまわりに溶け込もうとしていたときよりも、今の凪のほうが遥かに人生を楽しんでる!

 

アクシデントありまくりで、ネガティブな出来事もてんこ盛り。しかも、その内容は今どきの苦痛をぎゅぎゅっと詰め込んでいるから、そこだけみると結構悲壮感あふれるもの。

なんだけど、そこを凪が不器用ながらも乗り越えて、いかにもポジティブ!という安直なものではなく、うまい到達点にたどり着く。その凪なりの試行錯誤とその結末がどうなるか見たくて、ついついハマっていってしまうのかなぁと。

 

第6話は、「スナックバブル」で働きはじめた凪に、「自分は人に興味がない?」という課題が出てきてしまい、それを坂本さんとの友情をからめて解決していったお話。

ラスト、ついに凪が恐怖で震える母(片平なぎさ)の姿が出てきたのだけど……。

まだまだ直接対決のシーンは出てこないようだけど、物語の終盤ではきっと対峙することになるんだろうな。

それもまた見もの。

 

原作だと今は5巻くらい?しかしドラマの展開早っ!

 

『凪のお暇』の見逃しは『Paravi』で見られます!

※本ページの情報は2019年9月時点のものです。最新の配信状況はParaviサイトにてご確認ください。

 

新たな飯テロドラマの刺客が放たれた!?『背徳の夜食』

グルメドラマが好きな私。美味しそうな料理と、人が美味しそうに食べてるところを見ると満たされるんですよね(もちろん自分も美味しいものを食べたいけど)。

 

それで、先日放送していた1時間のスペシャルドラマ『背徳の夜食』を視聴。

話は2本立て。

ひとつは、旦那のために肉食生活から菜食生活に変え、ダイエットに成功した結婚3年目の妻(橋本マナミ)が、夫の浮気が原因でついに掟を破り、夜食として肉を爆食する「汁だく牛丼」。

もうひとつは、飲んだ後のラーメンがやめられないエリートサラリーマン(北村有起哉)が、健康診断で再検査を言い渡され、妻から節制生活を強要されるも、自分の職場でのスタンスが部下から反感を買っていることを知り、ショックで大好きな脂ギトギトのラーメンを激食する「背脂ラーメン」。

 

どちらも、大好きだったものを封じられ、その上別のストレスが原因でつい封印を解いてしまう。

しかも「夜食」という背徳感だけでなく、「食べない」という意志よりも強いショックやストレスがあっての食事なわけだから、この夜食に実はポジティブな理由がないところが特徴。

 

でも、踊るように肉に食いつき、ラーメンをすする姿はそんな理由なんて忘れてしまうくらいこちらも心の中で狂喜乱舞してしまうほど美味しそう。

 

私は個人的に、橋本マナミのほうの話のが好きで。

本当は旦那の帰宅が遅いから一緒に夕飯を食べてないし、妊活もしてないのに、「菜食妻」という名前で真逆のことをブログに綴ってキラキラ主婦を演じていたり、夫の浮気を知ってブチ切れて、街中で大きな独り言を言いながら発狂したり。なかなか狂ってておもしろい。

ようやく吐け口として見つけた、かつて常連だった肉飯屋に入った瞬間「ただいま」といったのは、そのピークだったのかも!?

そして入店後頼んだメガ盛り汁だくの牛丼に全身を使って挑む。だけど、口に運ぶ瞬間の箸運びがものすごく上品で。肉に対してあさましい勢いがあったはずなのに、それと反した食事の振る舞いのギャップもまたよし。

 

ぶっちゃけ、どちらの話もストーリー自体は深さがあるものではないけれど、食事シーンへの助走と考えれば気にならない。

むしろ、とにかく見てるこちらのストレスまでも奪ってくれるような食べっぷりが本当にいいんです!

 

今回は2話だけだったけど、また続編あるかな?

今のところ見逃し配信が見当たらないんだけど、続編やるときはぜひ今回の再放送をお願いします!

演出もキャラもオチも味わい深く可笑しい!満島ひかり出演の『シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ』「何者」

満島ひかりが登場する江戸川乱歩の映像化シリーズが結構好きで。

その割には見逃してばかりなんだけど、この間地上波で再放送していた『シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ』「何者」を視聴できた。

 

もともとは2016年にBSプレミアムで放送された作品。

 

ストーリーは、私(平井“ファラオ”光)が、友人・甲田(池上 幸平)の誘いもあって、結城(若葉竜也)の家に夏休み滞在しているところからはじまる。

そこには、結城の許嫁・志摩子(真野恵里菜)も同居していて、どうやら甲田と結城と彼女は三角関係らしい。

ある日、結城が皆とは別の部屋にいると何者かに発砲される事件が起きる。そして、それを発見したのが甲田。

次第に証拠品が見つかり、甲田が犯人として逮捕されるが、結城の家に出入りしていた推理好きの赤井(と名乗っているがある捜査のため偽名を使っている明智小五郎)は、犯人が甲田かどうか疑っており……。

 

原作に忠実に描いているというだけあって、演じきれなそうなところは小説の一部がナレーションとして使われるんだけど、そうだとしてもユニークな演出のおかげで、独特な世界観を放ってる。

 

まず、明智小五郎って男性のはずなのに、女性である満島ひかりが演じているし、今回は、髪もセミロングで長いし、服装もどことなく女性っぽい。

メイクも青い斑点のようなものを目の周りに施したりしてこれまたユニーク。

 

そして、この話の主人公「私」もなぜか終始半ズボンにセーラー服。

志摩子もなぜか太眉。

だからって別にオチがあるわけではない。

けど、オシャレでもあるし、出オチ感もあるし、とにかく可笑しい。

 

あと、推理もの好きの結城と明智小五郎の2人が、推理小説や探偵が関わった事件なり、そこでの推察なりを書籍を前に雑談するシーンがあって。

そこで結城が、目の前にいるのが明智と知らず(そのときは赤井と名乗っているから当然なんだけど)、「明智小五郎はどうも理屈っぽい」と批判する。でも、肝心の明智はそんな発言に怒ることもなく、その場ではスルーし、一番結城にダメージを与えられそうなところで自分の正体を暴露するという。

そんな意地の悪さも可笑しい。

 

結末は、ちょっと意外性のあるもの。

日頃(おそらく敢えて)奇行が多いし、のらりくらりととぼけた人間である明智。

そんな彼が犯人本人に誰が事件を犯したか、そしてその推理を伝えるんだけど、とぼけた感じで言ってる割にはその実、彼に言い逃れできないよう計算し尽くして伝えていて……。

その緻密なところも可笑しい。

 

とにかく30分のドラマなのに、乙でしたイキで趣深いドラマなんだよね。

 

7/27に同じものを再放送するようなので、見逃して興味ある人はぜひ!

 

これまでので見逃したのもあるから一挙放送やらないかしら?あと新作もそろそろほしいところです。

 

前の記事はこちら

小沢真珠のキャラ勝ちな『ルパンの娘』

ドラマ『ルパンの娘』を見ているとどうしても目が行ってしまうのが主人公・華(深田恭子)の母・悦子を演じる小沢真珠。

 

深キョンとそれほど年の差がないはずなのに母親役ということは、きっとドラマの中では、美魔女系の母という設定なのかもしれない。だからそのイメージに違わず、セレブ妻風の見た目。

 

そんな悦子は、華に向かって「次の獲物はこれよ、うふふ」と大げさに笑ってみせる。(華は泥棒一家に生まれながら、家族の稼業を疎んでいるから、「そんな得意げに笑われても…」と呆れているのだが、そんなのお構いなし!)

そして、事あるごとに華の父であり、夫の尊(渡部篤郎)に、これまた大げさに甘えたり、いちゃついたりするわけ。

 

このオーバーでやりすぎな演技はまさに『牡丹と薔薇』……!

いつかバッドを振り回したり、財布ステーキとか出てくるんじゃないかと思った。

 

けど、おちゃめなところも多くて、盗みに入る敵陣勢を欺くために日本語がたどたどしいのにめっちゃ気が荒い外国人マッサージ師になりきったり、華、尊とともに敵地へ侵入したとき、自分の姿を隠すスクリーンを持っている最中、身体の限界を迎え「脚が痛い」と言い出し、作戦が失敗しかけたり……。

そんな一面も結構魅力。

 

だから、母・悦子が登場するとついつい主人公そっちのけで見入ってしまうのよね。

 

かといって、華に魅力がないわけでなく。

 

この話自体、フジテレビの夜10時に放送する割には、日テレ系土曜夜9時的なファミリーテイストなノリで。

 

まず泥棒一家出身の華は、彼氏の和馬(瀬戸康史)と付き合っているが、いざ結婚の話が出て初めて和馬が警察一家出身だということを知ってしまう。

そのせいで、別れを決意するものの、自分の家族がターゲットとした相手と和馬が警察の仕事で狙った犯罪組織が合致してしまい、和馬を手助けするべく、嫌々、華は泥棒の手伝いをしてしまう……というのが2話までの流れ。

 

それで、いつもはおっとりで女の子らしい華なのに、いざ、和馬のために泥棒として敵地に侵入するとキリッとした表情に変わり、敵に回し蹴りをくらわせたり、ドスの利いた声を響かせたりしてとどめを刺す。

 

このわかりやすいギャップは、『初めて恋をした日に読む話』では見られなかった姿。

 

それはそれで、魅力的なんだけど、やっぱり小沢真珠の濃さに比べてしまうとちょっと薄味。

ただ、和馬の母が華の素性を調べだす3話以降、風向きが変るか?

 

しかし個人的には、これからのどんぐりさんと栗原類の活躍にも(濃さという意味で)期待しているけど、どうなる!?

 

ちなみに原作はこちら。ドラマとは話の流れが違うみたいだけど……?

 

前の記事はこちら

 

空気なんて読まなくていい!澱んだ空気の浄化の仕方がわかる?『凪のお暇』

原作未読な上、「全部捨てたあとのその次って何があるんだろう?」と想像できなくて、実はそんなに期待していなかったドラマ『凪のお暇』を見てみたら、結構おもしろくて。

 

自己主張すると嫌われてしまうのでは……そんな恐怖から、空気を読みまくり、会社の同僚のキラキラ女子からはマウンティングされても我慢している凪(黒木華)。

社内のイケてる営業男子の慎二(高橋一生)と付き合っていることが唯一、彼女たちからのマウンティングをはねのけられるカードだと思って心の拠り所にしていた。

しかし、「節約とか趣味な貧乏くさい女は大嫌い。会っているのはあっちが合っているだけ」と明らかに自分の悪口を会社の同僚に言っているのを偶然聞いてしまい、凪は会社を辞め、家を引き払い、持っているもの・人間関係をすべて捨てて、「お暇」をもらうことを決意する。

 

原作のイラストの印象から、女子からのマウンティングとか、彼氏の横暴さとかもっとマイルドに描くのかと思ったら、結構きつくて。

 

キラキラ女子は凪の服装を「女子アナっぽいよね〜」と褒めているように見せてけなしているし、調子よく凪に仕事を押し付ける。

彼氏の慎二は、凪が辞めたあとに彼女の部署に行って、キラキラ女子たちと会話していたときに凪のことを「そんな子いたっけ?」とけなす。

しかも、エスケープ後の天パーの凪に髪型が変とかブスと言い放ち、変わりたいと言う凪に「お前は絶対変われない」と断言する。

 

こんな人がまわりにいたらそりゃ、逃亡するよ……。

 

でも何もかも捨てた凪には、「変わりたい」という願望に見合った価値ある出会いがちゃんと用意されているんですよね。

 

自販機のお釣りを拾うし、パン屋からタダでパンの耳をもらってくるし、近所からは疎まれている真上の階に住んでるおばあさん・緑(三田佳子)は、あるきっかけで凪とのご縁ができるのだけど、「部屋の中が荒んでたらどうしよう……」なんて思いきや、大好きな映画を快適に鑑賞できるようホームシアターばりの空間になっていて。しかも、もらってきたパンの耳は映画鑑賞のお供にするため、チョコがけにしたおやつにして食しているという工夫っぷり。

 

最初は凪のことを睨んでいたお隣の小学生・うららは、嫌いで睨んでいたわけでなくて、凪のフワッフワの天パーをただ触りたいと思っていただけだとわかったり、近所の激安八百屋で値段を打ち間違えられていて、客も混んでるし、店員もイライラしてそうだし、また空気を読んでスルーしようかと思うも、それじゃあ、なにも変わってないと思って勇気を振り絞って凪が声をかけると、「ごめんなさい!」と店員に平謝りされた上に近くにいたお客のおばちゃんも「許してあげてねー」なんて言って野菜をくれたり。

 

凪が今まで消極的だったせいで何も見られなかった優しい世界が広がってくる。

 

緑さんみたいに自分の好きな世界を作って、快適に過ごすこと、気になったことは相手に伝えること。そうすれば、そこに心地いい空気が流れる。

 

1話だけでも澱んだ空気をどうクリアにしていくのか教えてくれた『凪のお暇』。

 

ただ、あんなに悪態ついてたのに凪のことが諦められなくてしつこそうな慎二と、ゆるふわ系のお隣さん・ゴン(中村倫也)との関係と、まだまだ自分を変えることをはじめたばかりの凪がこれからどう変化していくのかが気になる。

 

ちなみに、ドラマを見たあと慌てて原作1巻を読んだけど、坂本さん(市川実日子)の登場でまた凪にひと波乱ありそう?

2話が楽しみ。

 

原作はこちら

 ※ちなみに今、Amazonのプライム会員なら読み放題(0円)で読むことが可能です!

凪のお暇 1 (A.L.C. DX)

凪のお暇 1 (A.L.C. DX)

 

 

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ゾンビドラマのフリをして実は恋愛ドラマ!?『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』

スペシャルドラマとして放送された『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』を視聴。

 

感染すると自分の本音をラップとして唱える「ラッパーゾンビ」になってしまう謎の感染症が、一夜にして世界中に蔓延。

主人公・みのり(小芝風花)の住む茨城もラッパーゾンビが増殖しつつあった。

そんな事件が起こる前日に、みのりは彼氏の拓馬(佐藤寛太)がラップに激ハマりしていることが許せないとケンカしたばかり。

でもまだまだ彼に未練があるものだから、彼の安否が心配になって探しに行くも行方不明。

ラッパーたちの聖地である地元のライブハウスに彼が行くと話していたことを思い出し、その場所を探すがそこにはゾンビ化した拓馬がいて……。

 

簡単に言ってしまうと彼氏を救出するのがメインのストーリー。

でもみのりと同じくゾンビ化から免れてる高校生・マコト(萩原利久)、モカ(井本彩花)、2人の担任教師の加奈子(トリンドル玲奈)たちの出会いによって、みのりがなんで拓馬のことが好きなのか考えさせられることになる。

 

まず、ゾンビだらけの世の中になってタガが外れた加奈子がモカと付き合っていたマコトを奪って、18歳の年の差を乗り越え付き合ってる……なんて一般的な価値観に変化が起きた。

そしてモカはまだマコトへの想いを引きずっているから2人がいちゃついてるのなんて見たくもないはずなのに、悪態つきながらも生き残るため、そしてまたいつかマコトが振り向くんじゃないかと期待して加奈子とマコトと一緒に行動している。

 

そんな面倒くさい恋愛関係を目の当たりにしただけでなく、愛あるラップバトルをゾンビの前で仕掛ければ元に戻るなんて噂を耳にしてしまい……。

そしてみのりは拓馬の存在について考えはじめる。

 

ぶっちゃけ顔がタイプ、それに医学部生だから頭もいいし、かといって勉強一辺倒ではなく、人望もある。

そんな彼のスペックが好きなのかもしれない。

冷静になるとそんな邪な気持ちで付き合っていたからラッパーの彼氏なんて恥ずかしいと思っていたのかとみのりは実感したのだけど、実際、ゾンビ化してしまった彼を目の前にするとそれだけとも違う、うまく言語化できないほど愛してた気持ちが溢れてくるみのり。

 

このドラマ、一応ホラーコメディと謳っていて、ゾンビがラップするのもしかり、話がひと段落するとサブタイトルが入ったりするし、登場人物の行動を映すシーンもラップっぽい軽快さを持たせる映像にしていたり、ラップゾンビはレコードが好きとか、ユニークな演出が満載だからそちらに目がいってしまいがちけど、その実、「愛とはなんだ!」と普遍的なテーマを投げかけているのがおもしろい。

 

そして、打算とかズルさとか、でもそれだけで割り切れない愛着とか……理屈ではどうにもならない恋愛の複雑な心境を絶妙に描いているのが個人的に心に刺さった。

 

惚れた腫れたばっかりで、ウィークポイントも見せてくれる恋愛ものって少ないじゃない?

その両面を見せてくれた作品。

私はいいドラマだなと思ったんだけど、どうかな?

 

TVerとかテレ朝動画とかで配信されていると思うので見逃した人はぜひ。

 

ちなみに原作はこちら。

 

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