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愛とは決して押し付けないこと?-クドカン初期脚本作「コワイ童話」『親ゆび姫』が伝えること

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宮藤官九郎脚本の初期作、「コワイ童話」の『親ゆび姫』を観た。

 

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栗山千明が主人公、相手役が今をときめく高橋一生さま。そしてクドカン風味を感じさせる皆川猿時さんもまだほっそりした感じで出演。

 

密かに同じクラスの祐一(高橋一生)へ片思いしている主人公の冴子(栗山千明)。なかなか思いを打ち明けられず、祐一の好みをこっそりリサーチしてパソコンにまとめたり、バイト先までストークして写真を撮ったり、想いを紙につづるのが日課。

あるときそんな冴子は願いが叶う恋のお守りとして謎の男から赤い液体を渡される。勇気付けられた冴子は思い切って祐一に告白するものの、振られてしまう。それでも諦めきれず赤い液体を祐一にかけると彼は小さくなってしまい……。

 

そして、小さくなった祐一を冴子は連れて帰るのだけど、そこからが酷い。

 

愛情を一方的に押し付け、祐一は拒絶しているにも関わらず、「好きと言わないと食事を与えない」と脅したり、逃げ出そうとした彼を逃げないように拘束したり。

 

挙げ句に、その秘密がバレた友人・亜矢にも赤い液体をかけて小さくして、その秘密をバラそうとしたお仕置きとして痛めつけたり。

 

小人になってしまった祐一と亜矢はどうなってしまうのか、そして冴子は……?

 

結末は、その暴走のツケがまわってきたような、ゾゾゾっとする展開になっています。

 

ちなみにタイトルにもある通り、童話の「親指姫」をモチーフにしたのがこの作品。

原作は概ねこちらの通り。

kotobank.jp

 

原作から考えると、高橋一生が演じた祐一を親指姫、手を変え品を変え、狂ったように祐一へ迫る冴子は、親指姫へ次々と求婚していく動物に見立ててストーリーが作られたよう。

 

原作のほうだと、勝手に誘拐されて意にそぐわない人にばかり求婚されてかわいそう……と主人公に感情移入するけれど、設定を逆転させたドラマのほうは、相手の意志を尊重せず自分の思うように扱う主人公の行動に共感できない人のほうが多いと思う。

 

それに加え、まるで祐一と付き合ってでもいるかのように勘違いした言動と、異常に執着しているところが見事に「コワイ」につながっていたと思えた作品。

 

「愛とは決して後悔しないこと」という有名なセリフがあるけれど、「愛とは決して押し付けないこと」というのが思い浮かぶほど、少女の狂い方は観ていてつらかった。

 

ちなみに、クドカンらしい、時系列が前後するような展開はなかったけど、ふざけたキャラが意外と物語のキーマンだった(『木更津キャッツアイ』のオジーとか、『あまちゃん』のヒビキ一郎とか)というパターンはここにも見られるかも。